環境
自動車に対する環境改善の要望として、2050年までに自動車のライフサイクル全体でのカーボンニュートラル化が、世界的に期待されています。
走行時のCO2削減に寄与する研究領域は、内燃機関を搭載した自動車の燃費向上や自動車から排出される有害物質に関する研究をはじめ、近年においては、自動車の電動化に関する調査、研究が増加しています。
JARIでは「カーボンニュートラルなモビリティ社会の実現」を目標に、内燃機関搭載車から電動車(xEV)までを対象とし、関連分野の研究活動を総合的に実施しています。
内燃機関自動車に関する研究では、各種燃料の性状調査からエンジン燃焼室内での生成機構解明、燃焼・排気後処理技術の研究、研究に必要となる計測法の開発や試験法策定、さらに大気放出後の移流・拡散や化学反応の研究および有害物質の健康影響評価・疫学調査といった幅広い関連分野の研究活動を総合的に実施しています。
そのほか、自動車用内燃機関技術研究組合に参画しエンジンの基礎・応用研究、また、MBD推進センターへ参画し、モデルベース開発に係わる研究を新たに実施しました。
自動車のライフサイクル全体を対象とした研究(次世代車のWell to Wheel評価、ライフサイクルアセスメント(LCA))はこれまでも行ってきましたが、2021年度には、LCAをメインで行う部署を立ち上げ、関係機関と連携し、研究に取り組んでいます。
排出ガス・燃費試験法や騒音試験法の分野では、リアルワールドにおける自動車の環境負荷低減に寄与するため、環境温度(-40~+50℃)を再現できる車両試験設備を活用した研究、排出ガス以外の排出物であるタイヤおよびブレーキ摩耗粉塵に関する研究などの新たな研究領域に取り組んでいます。
xEVに関する研究では、標準化・基準化を推進し、電動車両国際標準(ISO/TC22(自動車)/SC37(EV)、IEC/TC69(BEVおよび電動産業車両))の国内審議団体として、FCV、BEVおよびHEVに係る国際規格(ISO/IEC)などの原案作成やコメント活動を産官学の協力を得て推進しています。
性能評価等では、電動車両やモータ/インバータ、蓄電池、燃料電池および充電器に関し、性能向上や評価手法開発、充電インフラ普及に資する研究を進めています。
蓄電池に関しては、リチウムイオン電池の適切な寿命評価技術の開発や劣化メカニズム解明のための研究に取り組んでいます。
水素、高圧容器、蓄電池の安全性評価研究では、Hy-SEF (Hydrogen and Fuel Cell Vehicle Safety Evaluation Facility) を活用し、安全な電動車両の開発に資する研究に取り組んでいます。
試験設備は、二輪車から総重量25t車までに対応した各種サイズのシャシダイナモメータシステム、ガソリン、ディーゼルおよびCNGエンジンに対応したダイナモメータシステム、テストコースにおける騒音測定装置を備えており、使用過程車から最新自動車まで種々な供試体について多様な走行条件での評価試験を行っています。
また、近年では試験対象も自動車以外の建設機械や産業用エンジン等に拡張すると共に自動車のタイヤおよびブレーキ摩耗粉塵に関する試験を担当し研究をサポートするなど新たな領域に取り組んでいます。