安全運転支援システムの通信系シミュレータに関するフィージビリティスタディ
 ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)は、最先端の情報通信技術を活用して、人と道路と車両を一体のシステムとして構築し、道路交通の安全性、輸送効率、快適性の飛躍的な向上を実現するものとして世界的に開発や実用展開が進められている。特に、道路交通の安全性の向上については、国内において政府が主導する「IT新改革戦略」で取り挙げられ、「世界一安全な道路交通社会」を目指した安全運転支援システムの実用化に向けた取り組みが官民の協力のもとで進められている。また欧米においてもITSを用いた安全運転支援システムが検討されており、日欧米がほぼ同時期にこうしたシステムのフィールド実証実験を計画している。
 このような路車間通信や車車間通信を用いた安全運転支援システムでは、移動環境における確実な情報伝達が重要となるが、様々な道路環境下でどの程度通信が可能であるか予測するためには、フィールド実験に加えて、計算機によるシミュレーションが有効と考えられる。こうした通信系の計算機シミュレーションを用いた評価は他の評価手法に比べて費用や再現性などに優れていると考えられ、様々な環境下で展開されるITSの通信システムの評価に適している。
 安全運転支援システムに用いられる通信の特徴としては、(1) 送受信者(車等)が高速に移動、(2) 比較的狭域において複数の送受信者が存在、(3) センターなどを経由しない直接通信を行う場合がある、などが挙げられ、通信系シミュレータについてもそうした特徴に対応する必要がある。
 しかしながら、現状のほとんどのCOTS(Commercial Off The Shelf)通信系シミュレータはITSを対象システムに入れずに設計されているため、その機能を拡張しなくてはITSの通信システムシミュレーションを効率的に行うことができない。さらに、現在は機能拡張の方法が研究者によって異なるため、たとえ同一の通信シミュレータを使っていても評価結果を直接比較することができない。
 本フィージビリティスタディでは、こうした課題を解決し、安全運転支援のための通信システムを評価する共通的なシミュレータの構築を目指して、COTS通信シミュレータの機能拡張のための基本的な設計方針を策定する。
 
【事業の目的】
 本フィージビリティスタディは、ITSにおける安全運転支援のための通信システムを共通的に評価する通信シミュレータを構築するため、既存の通信シミュレータの適用可能性を評価し、機能拡張のための基本的な設計方針を策定することを目的とする。

【事業の内容】
 本フィージビリティスタディは、ITSにおける安全運転支援のための通信システムを共通的に評価する通信シミュレータを構築するため、既存の通信シミュレータの適用可能性を評価し、機能拡張のための基本的な設計方針を策定することを目的とするものである。
 スタディの基本的な作業方針は次のとおりとする。
 既存の市販レベルにある通信シミュレータで、比較的広く利用され、ITSへの適用可能性の高いものを選定して共通の評価シナリオのもとで出力の妥当性および、同レベルの出力を得るのに要する必要計算時間などのシミュレータ性能を比較評価する。さらに適切なシミュレータを選定して、安全運転支援への応用に向けた機能拡張の基本設計方針を作成する。
 上記の方針に沿って検討作業を以下の順序で行うこととした。
(1)通信系シミュレータの要求機能性能調査
 安全運転支援システムの通信システム部分を評価するにあたって要求されるシミュレーション機能と性能項目をまとめる。
(2)現状シミュレータの調査
 上記の機能要求項目に対し、現在 ITS の(無線)通信システム部分に用いられている代表的な COTS(Commercial Off The Shelf)通信システムシミュレータが機能拡張なしにどの程度対応しているか調査を行う。
(3)評価シナリオの構築
 代表的な評価シナリオ(安全運転支援実証実験等で用いられた通信仕様を参照)を作成し、それぞれの評価対象シミュレータ上に構築する。このシナリオに沿って、より詳細な機能と性能の評価を行う。
(4)評価シナリオに基づく評価・検証
 上記で構築した評価シナリオを用いてそれぞれのシミュレータが生成した結果の精度を比較・検証する。また、可能な場合は対象シミュレータ内のモデルを同様なシミュレーション結果(精度)を生成するように改良し、改変事項をまとめる。
(5)シミュレータの選定と実行性能定量評価
 同一精度のシミュレーション結果が生成される状態で対象シミュレータの定量的な実行性能(必要計算時間等)の評価を行う。
(6)機能拡張のための設計方針のまとめ
 上記全ての調査・評価結果を比較し、実用化の可能性のあるシミュレータについて機能拡張のための設計方針をまとめる。