研究事業について

衝突安全 試験・評価法

衝突安全 試験・評価法

衝突実験用ダミー開発・評価

衝突実験用人体ダミーは、前面衝突、側面衝突、後面衝突などの種々の衝突形態に応じて製作されています。より高い自動車の安全性能を確保するために、例えば、救命率の高いエアバッグやシートベルトなどの開発に、人体の特性により忠実で、繰り返し性の良い、耐久性に優れたダミーの開発研究がおこなわれています。JARIも人体ダミーの開発・評価の研究に参画し、その一翼を担うという役割を果たしています。ここでは、そうした活動の一部を紹介しています。

 

前面衝突用ダミーの開発・評価

現在、前面衝突用ダミーとしては、Hybrid-IIIと呼ばれるダミーが各国で用いられています。しかしながら、Hybrid-IIIは1970年代中期に開発されたダミーであり、現代の進化した乗員保護装置の評価には、より人体特性に近い、計測能力に優れたダミーが求められています。このような状況で、米国では、THOR(Test Device for Human Occupant Restraint)と呼ばれる次世代の前面衝突用ダミーの開発、検討が進められてきました。THORに対する国際関心は高く、現在では、各部の改善をはじめ、較正方法、搭載手順などの検討が、国際的な協力の下で行われています。JARI はTHORの評価試験を行なうともに、試験法に用いるツールとしての使用上の問題点などについても検討し、その結果を次世代前面衝突ダミーに関する議論の場に提供することで、THORダミーの改善、性能向上に貢献しています。

  THORの評価試験状況の一例(胸部インパクト試験)

 道路交通騒音のシミュレーション

重さ約23kgの金属製円柱を胸部前面に衝突させ、試験で得られた応答を人体の特性に基づいて設定された応答要件と対比することで評価します。

  

 

 

 

THORの評価試験状況の一例(スレッド試験)

 

衝撃試験装置の台車(スレッド)上にエンジン、ドア、タイヤなどを取り外した車両のボディを固定し、衝突時相当の衝撃加速度を与え、搭載したダミーの挙動などを観察します。

 スレッド試験は衝突試験と異なり、車両そのものを破壊しないため、同一条件での繰り返し試験に適しています 。

 

 

側面衝突用ダミーの開発・評価

 自動車の側面衝突保護に関しては、1970年代中ごろから欧米がそれぞれ研究を重ねてきましたが、市場実態の違い、乗員保護に対する考え方の違いなどから、欧米で異なる試験法、傷害基準、ダミーが採用される結果となりました。しかしながら、乗員保護装置の進化と国際基準調和に関する機運の高まりとともに、より人体特性に忠実で、国際的に統一された新たな側面衝突用ダミーの開発が期待されていました。このような状況で、国際標準策定機関であるISOは、活動アイテムの一つとして側面衝突用ダミーの開発を取り上げ、そのダミーを国際的に統一されたダミーとするべくWorldSID(Worldwide Side Impact Dummy)と命名し、開発に着手しました。WorldSIDの開発は、自動車衝突安全に関わる各界の専門家を集めたTask Groupによって推進され、JARIは開発の初期段階からTask Groupに関与し、ダミーの仕様検討などの議論に参画してきました。また、開発されたダミーに対する評価試験を行ない、その結果をTask Groupに提供することで、ダミーの改善に貢献しています。

WorldSIDの評価試験状況の一例(胸部インパクト試験)

  

 

 

 

 

重さ約23kgの金属製円柱を胸部側面に衝突させ、試験で得られた応答を人体の特性に基づいて設定された応答要件と対比することで評価します。

 

後面衝突用ダミーの開発・評価

 後面衝突用ダミーとして開発されたBioRID-II(Biofidelic Rear Impact Dummy – II)は、後方から衝撃を受けたときの人体の脊柱全体の動きを模擬することを意図して開発されたダミーです。このダミーはスウェーデンのチャルマーズ大学によって開発されていますが、その特性の基礎としては、JARIで行われた人体頸部特性の研究の結果が生かされています。JARIでは、BioRID-IIについて、人体頸部特性の研究に際して行った試験と同様の条件で試験を実施し、人体の頭部、頸部の挙動と比較、評価しています。

BioRID-IIの脊柱構造

脊柱背面

BioRID-II_NeckSideView_IMGP0915

頸椎側面

 

 

 

 

 BioRID-IIの脊柱は、人体の脊柱と同様に7個の頸椎、12個の胸椎、5の腰椎で構成され、各椎体間をピンジョイントで連結することで、人体と同様の柔軟な脊柱挙動を模擬しています。

 

BioRID-IIの評価試験状況の一例

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60ms

120ms

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180ms

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240ms

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300ms

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ヘッドレストの無いシートにダミーを着座させ、後方から前方への衝撃が加わった際の頭部、頸部の挙動を観察し、人体の挙動と比較しています。 

自動車の安全性能

自動車の安全性を確認するため、実際の自動車を使用した衝突試験を行っています。

自動車アセスメント、各国の試験法規に準じた試験、新しい安全基準を制定するための基礎実験、自動車開発のための試験、交通事故を再現した試験などのさまざまな目的の衝突試験を実施しています。

フルラップ前面衝突試験

米国及び日本の法規試験として採用されている50km/hで平面バリアに衝突させる試験形態。(写真は、55km/hで実施している自動車アセスメントの試験状況、自動車アセスメント(冊子)2003年3月版より)

側面衝突試験

欧州及び日本の法規試験として採用されている乗用車を模擬した台車を50km/hで衝突させる試験形態。(写真は、55km/hで実施している自動車アセスメントの状況、自動車アセスメント(冊子)2003年3月版より)

拘束装置等の安全性能

CRS(Child Restraint System;年少者拘束装置)、シートベルトなど自動車乗員を保護する装置の安全性を確認するための試験を行っています。

CRS衝撃試験

法規試験として採用されている試験形態

法規試験として採用されている試験形態

近年は、CRSアセスメントの試験を中心とした乗員保護装置のほかに、歩行者保護のための自動車のバンパやボンネットの改良などに関する試験を行っています。

歩行者保護試験

歩行者の頭部ならびに脚部の保護を目的とした試験法の開発、ならびに、同試験法で用いるインパクタ(人間の頭部・脚部を模擬した試験ツール)の開発を行っています。

頭部保護試験法

頭部を模擬したインパクタによりボンネット・フェンダー部の加害性を評価します。

脚部保護試験法

脚部を模擬したインパクタによりバンパ部の加害性を評価します

大型車の安全性能

フロント・アンダーラン・プロテクター(FUPD)とは

ボンネット型乗用車と大型トラックの正面衝突事故では、乗用車がトラック前部下面にもぐり込み、乗員が重傷・死亡に至るケースが多くみられます。この原因は、乗用車と大型トラックの重量差とともに、乗用車がもぐり込むことにより乗用車本来の衝突安全性能が発揮できないことが挙げられます。

もぐり込み事例(実車衝突実験)

FUPDは、トラックの前部に取り付けることで、乗用車のもぐり込みを軽減する装置です。欧州では2003年10月からFUPDの装着が大型トラックに義務付けられています。

日本でも、大型トラックへのFUPD装備を義務化するための法整備が進んでおり、FUPDを装備したトラックも販売され始めました。

FUPDの取り付け位置

日本における大型トラック※の事故実態

※大型トラック=GVW8トン以上の貨物車

正面衝突事故では、大型トラックに衝突した乗用車運転者の死亡者数が最も多い。

車種別車両相関(正面衝突、死亡)

乗用車対大型トラックの事故は、乗用車同士の事故に比べ約10倍以上危険。

車種別重傷死亡率(正面衝突)

もぐり込み事故が起こる理由

大型トラックの前部下面(前輪まで)には、ほとんど強度部材がありません。また、高さの違いから大型トラックのフレーム下端は、乗用車の前部強度部材(フロントサイドメンバ)には接触しない位置にあります。そのため、衝突時に両車の部材がすれ違ってしまい、もぐり込みが起こると考えられます。

FUPDの確認試験

衝突実験の結果、同じ衝突速度であっても、FUPD装備車との衝突では、未装備車との衝突に比べて、フロントガラスや車室内の変形が少ないことがわかりました。

FUPD未装備車との衝突

FUPD装備車との衝突

乗用車の変形状況(フルラップ衝突)

FUPD未装備車との衝突

FUPD装備車との衝突

乗用車の変形状況(オフセット衝突)

大型トラックにFUPDを装備した場合の効果予測

事故分析の結果や実験結果などから、大型トラックにFUPを装備した場合の事故低減効果を算出したところ、大型トラックにFUPDを装備することにより、45%の乗用車乗員を救えることが予測されます。

FUPD装備による死亡事故削減数の効果予測

FUPD装備による死亡事故削減数の効果予測