依然として交通事故により年間約5,000人が亡くなるとともに、負傷者数は約100万人にも上ります。交通事故時の死傷者の被害軽減は社会から求められている大きな課題です。当研究所では、安全対策向上のために実車衝突試験をはじめとする各種の試験・研究を行っています。
オフセット衝突
実際の事故の発生要因や車両の破損状況などを詳細に解析し、道路環境、車両特性の両面から交通事故の被害低減に向けた対策を調査しています。

また、これらの事故の調査を通して得られた情報をもとに、交通事故を解析するためのシミュレーションソフトの開発を行っています。

事故車両及び事故現場の状況をもとに衝突事故の状況を再現し、衝突速度や衝突位置などの分析を行ないます。
交通事故の統計分析を通して、的確な安全対策への提言を行うと共に、これまでに行われてきた安全対策の効果を調査しています。

自動車アセスメントの総合評価が高いほど死亡重傷率が低い傾向がみられ、全体的には総合評価が実際の交通事故における自動車の安全性を示していると考えられます。
ドライブレコーダは、事故が発生したときの状況を映像として記録する装置です。
これまで、事故が発生した時に自動車や自転車、歩行者といった事故当事者がどのような行動を取っていたのかは、目撃証言や数少ない現場証拠から推測するしかなく良くわかりませんでしたが、この装置のおかげで事故原因などがずいぶんわかるようになりました。 2000年ごろから、タクシー会社を中心に前方の映像を記録するタイプのものが普及し はじめ、現在では、大型車や自家用車にも徐々につき始めています。また、バイクに設置するタイプや、前方でなく車内の状況を記録して車内事故の状況を記録したり、事故時の乗員の被害状況をいち早く救急救命隊に伝えるなどの活用方法なども検討されています。
側方や後方、荷台などを映像を記録できるものもあります
サイドミラーに映る情報を記録。自動車や自転車、歩行者との事故発生前後の映像を記録します
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バスでは車内での転倒などの車内事故を記録するためにも活用されています
走行中に歩くお客さんバイクの事故は、痕跡が残りにくく原因が特定しにくいため、状況把握の為のツールとして特に期待されています

事故発生時に乗員が体のどこをぶつけたかを記録して救急救命隊やERで活用する構想が検討されています

普及しているドライブレコーダは、前方を記録するタイプのものです。連続的に記録できるタイプもありますが、映像を記録する装置であるため記憶媒体の容量をたくさん必要とします。
現在普及しているドライブレコーダのほとんどは、ブレーキを踏んだり衝突したりした時の加速度の急な変化に反応してその前後の映像を記録するタイプのものです。
常時メモリー上で映像を記録していますが、急な加速度の変化があったときにのみCFカードなどの記憶媒体に加速度変化前後数十秒間の映像を保存します。

歩行者・自転車・バイク・自動車との衝突場面が記録できます。



事故の原因を分析する際に活用します。交差点でどちらに進行する権利があったかを信号の色で判断したり、乱暴な運転(急な車線変更や方向指示器を出していなかったなど)をしていなかったかなどを判断できます
![]() 交差点での衝突事例 |
![]() 衝突の0.7秒前の映像(自車両側の信号は赤なので自分の信号無視が衝突の原因とわかります) |
記録されているという緊張感から、危険な運転をすることが抑制され事故の程度や件数が減少することが報告されています。

ドライブレコーダ搭載による事故件数の削減率
2007年10月に東京のタクシー事業者24社へのアンケート調査の結果では、ドライブレコーダの導入により20事業者で事故削減効果が見られたと報告されています。
出典:山崎孝章(2009)、ドライブレコーダを活用した事業用自動車の事故防止の推進、自動車技術会2009春季大会フォーラム「交通安全にどこまで貢献できるか、ドライブレコーダ!」資料
当研究所では、事故削減にむけたドライブレコーダの普及策や記録されたデータの効果的な活用方法を検討・提案しています。
ドライブレコーダは加速度変化をトリガーとして映像を残しているため、事故だけでなく、急ブレーキを踏んだ時の映像も記録します。運転手が危険な状況を回避するために急ブレーキを踏んでいることも多くあります。事故にはならなかったが危険であった状況は「ニアミス」と呼ばれ、事故データとあわせてさまざまな研究に利用しています。

ニアミスがどこで発生したかを地図に載せて行くことで危険な場所を抽出できる可能性があります。

GPSの情報で事故やニアミスの発生地点を特定すると、インターネット上の地図などを用いて事故発生地点が特定でき、事故原因をより詳細に分析できます。

この小学生は公園に遊びに行く途中だったことがわかり、対策の方向性を検討する材料とできます。
日ごろからニアミスデータを収集し運転の悪い所をみつけて安全運転を心がけるすることで事故を抑制できます。業務で自動車をで利用する企業では、ニアミスデータを収集して会社全体での事故の傾向や運転手の事故傾向を見つけ出し運転改善に役立てるようなしくみづくりが検討されています。
2007年11月~2008年2月にかけてタクシー会社3社に協力してもらい、ドライブレコーダのデータの安全教育への活用のしかたを検討する実験を行いました。営業場所や運転手の特性が会社により異なるため発生するニアミスのタイプも傾向が異なります。ドライブレコーダのデータを集計して活用することで、それぞれの事情に合わせた教育が実施できます。

A社は、小規模都市で営業する会社であるため、正面衝突や出会い頭といった小規模道路で発生するタイプのニアミスが多く発生しています。 B、C社は、大規模都市で営業する会社です。追突や合流車線といった交通量の多い大規模道路で発生するニアミスが多いです。また、自転車や歩行者とのニアミスが多い点も特徴として挙げられます。
出典:国土交通省自動車交通局、平成19年度「映像記録型ドライブレコーダ活用モデル事業」報告書