水素のはなし第2回 今、水素エネルギーが注目されているわけ

最近、新聞やテレビのニュースなどで「水素」という言葉がよく見かけられるようになりました。日本ばかりでなく世界的に注目されている、エネルギー資源としての「水素」。今回は、その背景や根拠から将来の展望までを探ります。

1 「脱・化石エネルギー」の切り札として期待される、水素。

エネルギー資源の大量消費の上に成り立っている、現代社会。 そしてそのエネルギー資源は、石油、石炭、天然ガスといった化石燃料が大半を占めています。 たとえば、私たちの生活に欠かすことのできない電気も、日本ではまだ半分以上を、化石燃料による火力発電に頼っているのが実情。 ところがこうした化石燃料は燃やすと二酸化炭素(CO2)や有害物質を出し、地球温暖化や酸性雨などの環境問題を引き起こす原因になっています。 また化石燃料は埋蔵量に限りがあり、特に石油は、このままのペースで使い続ければ今世紀中にも枯渇してしまう可能性が高いのです。 そのうえ日本はそうした化石燃料のほとんどを輸入に頼っており、エネルギーの安定供給という面でも大きな不安を抱えています。

「地球環境保護」と「エネルギーの安定供給」という表裏一体の重要課題を、どう解決するか。そこで、経済産業省をはじめ国を挙げて進められているのが、化石エネルギーに代わる新しいエネルギーの開発です。 永続的に安定供給可能な資源から、環境を汚さないクリーンな方法で、効率よくエネルギーを作ること。 それはまさに、人類の夢といっても過言ではありません。そして、その条件をすべて満たすのが「水素」というわけです。

水素は燃やしてもほとんど有害物質を排出することがない、クリーンな燃料。CO2の発生もありません。 そしてなによりも、化石燃料による発電とは異なり、「燃料電池」というシステムによってダイレクトに電気エネルギーを作ることができます。 これからの社会を支えるエネルギーの新しい主役として、水素は世界的に期待されている切り札。 アメリカのブッシュ大統領は2003年の一般教書演説で、「水素燃料電池自動車の開発で世界の先頭に立つ」と宣言し、「水素社会」の実現を目指すことを表明しました。

2 さまざまな方法で作り出せる水素は、無限の資源

「燃料電池」というシステムを用いて電気を作ることができる、水素。電気エネルギーを取り出したあとはただ水に還るだけで、地球温暖化の主因であるCO2や大気汚染の原因となるSO2、NOxといった有害物質を排出しない優れた特性を持っています。 また化石燃料のように埋蔵されている資源ではなく、さまざまな方法で作り出すことができるのも、水素の大きな特長。ガソリンや灯油から作ることも、都市ガスやLPGから取り出せすこともできる。 そうした化石燃料ばかりではなく、ヨーロッパでは廃棄物などを利用したバイオマスエネルギーからの水素製造が積極的に研究されています。 さらに、水素を最もシンプルに取り出す方法として「水」の電気分解という方法も。水が原料であれば、いつでもどこでも水素を作り出すことができ、原料が枯渇する心配はありません。 またこのとき必要な電気を太陽光や風力といった自然エネルギー発電で確保すれば、地球環境に影響を与えることもないのです。

水素の生産は「この原料で、この方法でなければ作れない」と限定されることがないので、気候風土に合わせたり、時代によって進化する技術に対応することが可能。 化石燃料のように産出国頼みになることがなく、エネルギーセキュリティ面でも安心ですし、なにより“底を尽く”心配がありません。 だからこそ、水素をエネルギーの主役にしようということが世界的に推し進められるようになったといえるでしょう。

3 自動車から家庭用エネルギー、携帯電話まで

水素はこれまで、エネルギーとしてではなく化学原料として使われる、いわば裏方の存在でした。 それが、燃料電池の原料となり、エネルギーの主役へと変貌しつつあります。 燃料電池は、まず自動車への利用が推進され、ガソリンエンジンに代わるものとして大いに期待されています。 水素のエネルギー単価は一般にガソリンより高くなりますが、燃料電池は燃料効率をガソリンエンジンの3倍程度に高められる可能性があり、将来的に自動車としての燃料費負担をガソリンエンジン車と同等レベルにまで低減するべく開発が進められているのです。 現在の燃料電池自動車はガソリンエンジン車と同様の操作で運転できるよう設計されていますが、本来はガソリンエンジン車とは全く仕組みが異なる電気自動車。 操作方法や室内空間、外観デザインなどの自由度が格段に大きいため、全く新しい発想の車が誕生する可能性も秘めています。

自動車に次いで、「定置式燃料電池」と呼ばれる住宅用のエネルギー設備も、いよいよ実用化の段階に。 これは、発電だけでなく、その過程で出る廃熱を生活用の温水として利用するいわゆる「コージェネレーションシステム」。電気と温水を併せて供給することでエネルギーの80%まで活用できる、省エネ性の高いシステムです。

燃やしても有害物質を出さない水素は、家庭用の燃料として利用することも可能。 将来、水素社会が本格的に到来すれば、現在の都市ガスのようにパイプラインで各家庭に水素が運ばれ、調理や暖房などの燃料に使ったり、燃料電池で発電したり、といった暮らしが実現するかもしれません。

また燃料電池の原料は、純粋な水素だけでななく、水素を含むメタノールを利用することで小型化をはかる研究も進められており、こちらも実用化目前。携帯電話やノートパソコンなどに利用され、従来のバッテリーに比べて連続使用時間を飛躍的に向上させることで注目されています。生活のいろいろな場面で、これからは「水素」がどんどん身近になってきそうですね。

※ 次回は「水素の安全性」についてご紹介します。おたのしみに!