水素のはなし第1回 水素のあれこれQ&A

知っているようで実はあまり知られていない水素。しかし意外と身近なところで利用されています。水素にまつわるエピソードをご紹介します。

1 水素は、いつごろ、どのようにして発見されたのですか?

1766年にイギリスの化学者ヘンリー・キャベンディシュが発見しました。 当時はモノが燃えたり、金属が酸化する原因になる「フロギストン」と呼ばれる未知の物質が存在する、と考えられていました。 キャベンディシュもその解明に取り組み、酸で鉄を溶かしたときに発生する燃える気体(水素ガス)に注目し、その細かなデータを発表。 1781年には、その物質と酸素の燃焼によって水ができることも実証しています。 その物質に「水素」という名前がついたのは、2年後のこと。 1783(1785)年に、ギリシャ語のhydro(水の意)とgennao(生れるの意)にちなんで、フランスの化学者ラボアジエが命名しました。

2 水素とは、どんな物質なんでしょうか?

水素(Hydrogen)
元子番号 1
元素記号 H
特徴 無色、無臭、無害
融点 14.025K
(-259.125℃)
沸点 20.268K
(-252.882℃)
重量 1モル
※あたり 2 グラム
(通常の空気の14.5分の1)

※モル
「モル」は物質量の単位(単位記号:mol)。
1モルとは12グラムの炭素12に含まれる原子と等しい数の構成要素を含む系の物質量。
1モルの物質には、約6.023×1023個の原子または分子が含まれていて、1モルの物質質量(単位グラム)は、その物質の原子量・分子量に一致するため、化学の世界ではこの単位がよく用いられます。

水素は地球上で最も軽い気体で、無色・無臭、無害。一番単純な構造の物質です。 燃えやすい性質があり、燃焼温度は3000゜C。空気中の含有率が4~74%の範囲で着火します。 ただし発火点は570゜Cと高いので、自然発火はしにくいといえます(ちなみにガソリンは500゜C)。 ただし燃えても炎はほとんど見えません。 暑い夏に立ち上る陽炎のように見えるぐらいです。 燃焼させると酸素と化合して水になり、ほかに有害なガスが発生しない、といった特徴もあります。

一般的にはあまり知られていませんが、水素は他の物質となじみやすく、金属にも良くしみ込みます。 その性質を利用して、水素の貯蔵に水素吸蔵合金を利用したり、水素ニッケル電池では吸蔵合金が電極として使われています。 しかし金属によっては、吸い込んだ水素で、その金属が壊れてしまうこともあります。

3 地球には、どのくらいの水素があるんですか?

水素単独では、空気中に0.5ppm程度でほとんどありません。 しかし地球の表面は約70%が海で覆われています。海水や河川、そして生物などの有機物等に含まれている水素も数にいれると、決して少ない量ではありません。 地表部に存在する元素としては3番目(1位は酸素、2位はケイ素)に多いとされていますが、地殻中には0.15%程度しか含まれていません。

なお宇宙全体では、水素はもっとも多く存在する元素です。宇宙の質量全体の約7割を占める、といわれています。

4 自然界に、純粋な水素は存在しますか?

自然界には、ほとんど無いと考えられます。 なぜなら、水素は酸素と結びつきやすいので、どんどん酸素と一緒になって、より安定した形態の水に変化してしまうからです。
一般には、そのままの状態では出てこないといわれている水素ですが、1983年にアラビア半島の東南に位置するオマーンでは、最高濃度80%の水素の発生があった、と報告されています。

5 歴史上、水素はどのように利用されてきたのでしょう。

20世紀の前半には、気球や飛行船の浮揚用のガスとして利用されました。 水素を利用した飛行船は1929年には世界一周に成功し、日本の霞ヶ浦飛行場にも寄港しました。 しかし1937年にアメリカでおきた大型飛行船ヒンデンブルグ号の炎上事故を契機に、飛行船自体の需要は大きく減ることになります。 なお、この事故によって「水素は危険」というイメージができてしまいました。水素の安全性については、誤解されている点も多いので、別の機会にあらためて詳しく説明します。
水素は昔の都市ガスにも利用されていたことがあります。 主成分は一酸化炭素と水素で、「水性ガス」や「合成ガス」と呼ばれていました。一般の家庭で、ごく普通に水素が使われていたのです。

6 現在、水素はどのように暮らしに役立っていますか?

水素がもっとも利用されているのは、肥料の原料として用いられるアンモニア(NH3)の合成です。 石油製品の脱硫などの精製や油脂の製造、その他メタノールの生成、そしてエレクトロニクス産業やガラス、鉄鋼産業などでも、水素は広く利用されています。
また燃やすと2000℃もの高温が得られるので、金属の溶接や加工・切断などにも水素が使われています。
あまり知られていないのですが、発電所では大型発電機の熱の冷却・制御に、水素を循環させる方法がとられています。 通常は熱を下げるのにはクルマのように「水冷式」が一般的です。しかし水は電気を通すので発電機には使えないのです。 そのほか、宇宙ロケットの打ち上げには液体水素と液体酸素が使用されています。 そして水素と酸素の反応によって電気を得ることができる燃料電池は、これまでの化石燃料エネルギーに替わる次世代のエネルギーとして、大きな期待が寄せられています。

※ 次回は「今、水素エネルギーが注目されているわけ」を紹介します。おたのしみに!