インタビュー第6回 JHFCは大きな、そして重要な国家プロジェクト。その役割は無限に広がっています。

平成14年度にスタートした第1期JHFCプロジェクト。燃料電池自動車と多種多様な水素製造方式による水素ステーションを運用する大規模な実証試験として、4年間実施されました。今年から始まる第2期JHFCプロジェクトに向け、第1期で行われたミッションでの問題点を振り返り、より大きな成果を得るためにはどうすればよいか、経済産業省 資源エネルギー庁 燃料電池推進室長 安藤晴彦さんにお話を伺いました。

1 JHFC第1期を振り返って~4年間で感じたこと~
2 FC開発はポーカーゲーム~一人勝ちする企業が登場してもいい
3 究極のエネルギーは燃料電池~無限に広がるJHFCの役割

JHFC第1期を振り返って~4年間で感じたこと~

安藤晴彦 85年通商産業省入省後、資源エネルギー庁原子力産業課、同庁公益事業部業務課総括班長、内閣府企画官などを歴任し、現在、同庁省エネルギー・新エネルギー部政策課燃料電池推進室長を務める。

さらに電気通信大学共同研究センター客員教授、同庁同部新エネルギー対策課長を兼務するなど、新エネルギー社会の到来を誘導する、国の重要な職務に就き、多方面で活躍中。

JHFC第1期の活動は、どのように感じられましたでしょうか。
安藤晴彦室長

第1期のJHFCの活動を振り返り、私なりにその感想を申し上げます。

まず、ひと言。「気合が足りない」というのが素直な感想です(笑)。第1期では、参加しているメーカーの気持ちが一つになっていなかったように思いますね。どちらかといえば、国主導のスタイルのままだったのではないでしょうか。

燃料電池というのは、地球を救う手段なんです。大袈裟だと思われるかもしれませんが、究極のテクノロジーなんですよ。石油資源は有限ですし、二酸化炭素も発生する。しかし、水から水に戻るサイクルを繰り返すのが燃料電池。新しいエネルギーを大事に育てるということは、日本だけでなく、世界の財産にもなるんです。その視点に立った一大プロジェクトがJHFCだったはずです。

しかし、JHFCに集まったみなさんの雰囲気はどうでしょう。みんなで一緒になってますか? データは共有してますか? 開発につながってますか? 参加しているメーカーは自社の情報漏れを危惧しているのだろうと思いますが、国民の血税を使ったナショナル・プロジェクトであるという認識をしっかりと持って、それに応えてもらいたいんです。

JHFCは国が主導するのではなく、みんなが主役のプロジェクトなんです。企業単独ではできないから、大きな志とミッションで、みんなでコラボしようという、だからこそ”JAPAN”の名を冠しているんです。ですから第2期では、しっかりデータを取って、みんなで開発できるような取り組みを期待しています。

私は要求がましいので(笑)、実は昨年でJHFCというプロジェクトをやめようか、という話も出したほどです。もちろん本意ではありませんが、なぜパブリックマネーを使っているのか。その原点をもっと考えて、情熱を持って進めてもらいたいのです。

JHFCプロジェクトの中での広報の重要性

年に1回JHFCの活動の総まとめとして開催される、JHFCセミナー

年に1回JHFCの活動の総まとめとして開催される、JHFCセミナー

親子体験イベントの様子

全国各地で開催されている、親子体験イベントの様子。もちろん試乗会もある。

厳しいことをいろいろ申し上げましたが、第1期の中でずいぶんと変わってきたなと感じたのは、広報は凄く頑張っている、ということですね。

たとえば、イベントをやろうということになると、土日は当たり前。言い出した側には責任もコストもついてくる。それでも、広報スタッフは燃料電池を愛し、意義を見つけ、人類不変の財産にしようと懸命に頑張っている。

小中学生、高校生、大学生など若い人たちに燃料電池の魅力を説くことは、開発のための人材層の発掘につながります。将来のサイエンティストを惹きつけるきっかけにもなります。燃料電池のブレイクスルーの目的意識をしっかりと持っている。それだけ大きなミッションなんだということを、広報はちゃんと理解して、目標を持って取り組んでいる。そういうふうに感じました。

JHFCで行っているのは、実証事業です。そこには技術開発があり、経済的にはどうなのか、という検証もある。もちろん安全性についてもしっかり検証し、燃料電池を実用レベルにまで高めて行こうという意気込みがある。その延長線上にあるのが、広報です。広報の大事さは、第2期以降も忘れてもらいたくありません。

私は本来黒衣タイプですから、本当はこういうインタビューに登場するのは嫌なんですが、ことJHFCに関しては、みんなでやらないといけないという思いがありますし、情熱ある広報担当からのご依頼ですから、今回ばかりは逃げ切れないなと(笑)。しかし、「気合が足りない」なんて厳しいことを言うのは、とても重要なことをやっているんだという意識を、みなさんにもう一度しっかり持ってもらいたいから。人類を救う燃料電池を自分の仕事にできるというのは、幸せなことですよ。それでメシが食えるのは、とても幸せなことだと心底思います。

ただ最近、惰性に流されてないか、という懸念はありますね。燃料電池の他の分野では仕掛けを工夫していたり、みな心の中に熱いものがあるのに、JHFCの場合は、会社としての情報の取り扱いが優先されているように感じます。それを乗り越える仕掛けというのが、JHFCにも試されているのかなと思います。

JHFCプロジェクト第2期への期待

フリート走行に使用されるFCHV-BUS。路線バスの他、中部国際空港内のランプバスにも利用されている。

フリート走行に使用されるFCHV-BUS。路線バスの他、中部国際空港内のランプバスにも利用されている。

FC電動カート。デザインも斬新で、かなりカッコイイ。 写真提供:栗本鐵工所

FC電動カート。デザインも斬新で、かなりカッコイイ。 写真提供:栗本鐵工所

第2期では、バスやタクシーを使ったフリート走行を実施します。一般の方が燃料電池車に乗れるプロジェクトです。

また、小型移動体、具体的にはFC電動車イスやFC電動カートなどのモニター試験も予定しています。メンバーの中には、しょせん子供の遊びだなどと思っている人もいますが、たとえばFC電動車イスがブレークして、商品化されれば、イノベーションの速度は高まりますからね。実は、車イス用燃料電池には、ものすごく強いニーズがあるんです。現在の電動のものは実質5時間ほどしか動きませんが、燃料電池車イスだと10時間稼動可能になります。このニーズからマーケットが創造されると、かなり面白いと思いますよ。

車イスの場合には水素貯蔵も高圧タンクを搭載するのは難しいので、水素吸蔵合金をどうするか、という問題が残されます。水素貯蔵合金の研究開発にはベーシックサイエンスが必要ですが、他方で、実際に使ってみてどうなのか、それを把握することで、より素晴らしいFC開発につながる可能性もあるでしょう。今日の投資が今すぐ生きなくても、5年後に結果が出れば、それはそれで意義のあることですからね。

2 FC開発はポーカーゲーム~一人勝ちする企業が登場してもいい