わが国の田園地帯では、耕地整理が進み、平坦な舗装路が碁盤の目のように交差しています。これらの交差点は見通しがきわめて良く、交通事故は発生しそうには思えません。しかし、実際にはこれらの交差点では出合い頭事故が多発しています。自動車研究所が行った茨城県内の事故調査によると、過去1~2年以内に事故が小貝川などの大きな河川の流域に集中し、いわば事故多発地帯を形成しています。また、日本全国では一年間に400人以上が、このような見通しの良い交差点での出合頭事故で亡くなっていると推定されています。
この事故の特徴はいくつか挙げられます。まず、第一に、全体の80%は昼間に発生しています。第二にこの事故の当事者の60%が高齢者であるということです。第三には、一時停止違反が50%を占めています。事故当事者への聞き取り調査では60%以上の方が、衝突するまで相手車両に気づくことがなかったと答えています。このように、昼間見通しの良い交差点で、接近する相手車両に気付くこと無く衝突事故を起こしているという不思議なことが起こっているのです。(財)日本自動車研究所では、この不思議な事故の要因を、人間の目の機能から明らかにしました。まず衝突するとはどのようなことであるかを考えます。次ページに衝突する場合の状況を示します。

図に衝突する場合の状況を示します。相手車両と衝突しない場合には、相手車両は運転者の視野の中で常にその位置が変化していますが、この図が示すように、衝突する場合には、相手車両は視野の中で一定の位置に留まって、動くことがありません。そこで、衝突するタイミングと衝突しないタイミングで撮影したビデオ映像を用いて、相手車両の発見のし易さを検討しました。その結果、視線を左右に動かさないで正面だけを見ていると、衝突するタイミングで接近する相手車両は発見が遅れることが分かりました。極端な場合には、交差点の手前10mまで接近しても発見できないようなケースが生じます。一方、皮肉なことに、衝突しないタイミングで接近する場合には少なくとも60m手前では発見できるのです。
このような、皮肉なことが起こる原因は、人間の目の機能にあると考えられます。人間の目の視野は大きく分けると中心視野と周辺視野に分けられます。中心視野は分解能が高く、物を詳細に見ることに適しています。一方周辺視野は動きに敏感に対応できます。人間には、周辺視野で動くものを異常と捕らえ、中心視野でその詳細を把握するシステムが備わっています。このような目の機能は、人類が車を運転する以前には有効に働いていたと思われます。しかし、前ページで紹介したような状況では、衝突する場合には、運転者の視野の中で相手車両が動かないために、その異常検知システムにかからないことになります。
このように、見通しの良い交差点での出合頭事故は、人間の目の機能に深く根ざしたものであると言えます。最後に、この事故に遭遇しないための方策をいくつか紹介します。以下の項目に注意して、事故に遭わないようにしましょう。