雪道や凍結路でブレーキをかけたときに、車輪がロックしてハンドルをとられたり、お尻が流れてビックリした経験をお持ちの方は多いと思います。雪国育ちのベテランドライバのなかには、このような場合でも小刻みにブレーキを操作して(いわゆるポンピングブレーキ)、上手に止まることができる方もおられるようですが、普通の人にはほとんど不可能です。ABSは小刻みなブレーキ操作を自動的に行って、タイヤをロックさせずに止まれるようにする装置です。

タイヤと路面の間には、ブレーキをかけた場合には制動力が、ハンドルを切ったときにはコーナリングフォースと呼ばれる力が発生します。この制動力とコーナリングフォースは、ブレーキのかけ方によって図1のように変化します。すなわち、コーナリングフォースは、ブレーキをかけないとき(スリップ比0)に最大となり、タイヤがロックする(スリップ比1)とほぼゼロになります。また、制動力は適度なブレーキをかけたとき(スリップ比が0.1~0.3)に最大となり、タイヤがロックしたときには低下します。ABSは、スリップ比をこの図のIIの範囲に収まるようにブレーキ液圧を自動制御して、最適な制動力を得ると同時に、コーナリングフォースも高い値に保ちます。

このような制御をすることによって、ABSは次のような効果を発揮します。
次に、具体的な例で効果をみてみましょう。
図2は、片側の車輪が滑りやすい路面に乗って直線走行しているときにブレーキをかけた例です。ABSなしの場合には、滑りやすい路面に乗っている車輪が簡単にロックしてしまい、車は滑りにくい路面の方に振られてスピンしてしまいます。このような場合でもABSがあれば、各車輪がロックされないように制動力がコントロールされますので、スピンすることなく止まることができます。

図3は、滑りやすい道路のカーブでブレーキをかけたときの例です。この場合もABSがない場合には全ての車輪が簡単にロックしてしまいますので、コーナリングフォースが働かず、カーブの外側に車体が振られてスピンしてしまいます。ABSがあれば各車輪はロックしないようにコントロールされますので、コーナリングフォースを保ったまま、すなわちハンドルを切りながら止まることができます。