
雨などで水に覆われた道路で、車線変更やブレーキ操作を行うとハンドルをとられたり、ブレーキの効き具合が悪くなったのを感じませんか?この原因の一つとしてタイヤが路面に伝える力の変化があります。
タイヤが水たまりに入ると、タイヤの溝に水が入り込もうとします。

タイヤが道路を走る時に発生する騒音を、タイヤ/路面騒音と言います。その発生原因のひとつに、タイヤに掘られた溝(トレッド溝)があります。タイヤからトレッド溝を無くすと、騒音は、かなり静かになります。
しかし、タイヤには、どうしても溝が必要なのです。なぜなら、トレッド溝のないタイヤは、雨の日に滑りやすく危険だからです。その原因のひとつが、ハイドロプレーニング現象です。
雨の道路で車を旋回させる力(コーナリングフォース)を、図1の試験機で測ると、図2のようになります。時速10km/h ではどのタイヤのコーナリングフォースも同じですが、溝無しタイヤでは、速度の上昇にともなってコーナリングフォースが低下し、約75km/hでゼロになっています。つまり、溝無しタイヤを車に装着して雨の中を走ると、速度の上昇にともなって車は曲がりにくくなり、ある速度以上(この例では、約75km/h以上)では曲がることができないのです。これを、ハイドロプレーニング現象と言います。これに対し、トレッド溝(たて溝+よこ溝)のあるタイヤでは、60km/h くらいまでは、10km/h と同等なコーナリングフォースが得られ、コーナリングフォースがゼロになるのは約100km/h になってからです。このように、トレッド溝にはハイドロプレーニング現象を防ぐ大切な役割があるのです。
![]() 図1 タイヤ力学特性試験装置 |
![]() 図2 トレッド溝の効果 |

改良タイヤ
タイヤメーカーでは、静かで安全なタイヤの開発に向けて努力が続けられています。私たちも、トレッド溝の形状を改良することにより、できるだけ少ないトレッド溝でハイドロプレーニング現象を防ぐ技術を検討してきました。ハイドロプレーニング現象を防ぐためには、タイヤと路面の間に入り込む水をうまく排水することが必要です。ハイドロプレーニング現象は、タイヤと路面の間に水が入り込み、タイヤの摩擦力が発生できなくなる現象だからです。
私たちの研究の例を図1~図4に示します。図1のようにガラスでできた路面に水を張り、乗用車で走行します。水の中には、図2の可視化粒子(直径1~4.5 mmの粟の粒)を混ぜておき、その動きを高速ビデオカメラで撮影します。撮影された可視化粒子の動き(図3の帯状の白い点)は、水の流れに沿っているので、これを解析することにより、タイヤと路面の間に入り込む水の流れが明らかになります。結果の例を図4に示します。図の中の小さな矢印が、その場所での流れの方向を示してします。タイヤと路面の間の水は矢印に沿って排水されているのです。この方向に合わせてトレッド溝を配置すると、水は溝にそって排水されるため、少ない溝で効率よく排水することができます。これにより、溝が少なく、ハイドロプレーニング現象の起こりにくいタイヤ、つまり静かで安全なタイヤの開発が可能となるのです。
![]() 図1:実験方法 |
![]() 図2:可視化粒子 |
![]() 図3:可視化の結果 |
![]() 図4:水の流れの分布 |