知りたい!くるまのこと「くるま学園」

あっ!ブレーキがきかない(ハイドロプレーニング現象)

ハイドロプレーニング現象とは?

雨などで水に覆われた道路で、車線変更やブレーキ操作を行うとハンドルをとられたり、ブレーキの効き具合が悪くなったのを感じませんか?この原因の一つとしてタイヤが路面に伝える力の変化があります。

タイヤが水たまりに入ると、タイヤの溝に水が入り込もうとします。

  • 入り込んだ水は、タイヤが回転することによって圧縮されて、溝から排除されて水膜は薄くなります。
  • タイヤと路面の接触が始まり徐々に摩擦力が生じてきます。
  • 水は排除され、路面表面の細かい凹凸部分が水膜を突き破ってタイヤ面と完全に接触することによりグリップ力が得られます。

トレッド溝の欠点は、騒音

トレッド溝

タイヤが道路を走る時に発生する騒音を、タイヤ/路面騒音と言います。その発生原因のひとつに、タイヤに掘られた溝(トレッド溝)があります。タイヤからトレッド溝を無くすと、騒音は、かなり静かになります。

トレッド溝の良点は、雨の日にすべりにくい

しかし、タイヤには、どうしても溝が必要なのです。なぜなら、トレッド溝のないタイヤは、雨の日に滑りやすく危険だからです。その原因のひとつが、ハイドロプレーニング現象です。
雨の道路で車を旋回させる力(コーナリングフォース)を、図1の試験機で測ると、図2のようになります。時速10km/h ではどのタイヤのコーナリングフォースも同じですが、溝無しタイヤでは、速度の上昇にともなってコーナリングフォースが低下し、約75km/hでゼロになっています。つまり、溝無しタイヤを車に装着して雨の中を走ると、速度の上昇にともなって車は曲がりにくくなり、ある速度以上(この例では、約75km/h以上)では曲がることができないのです。これを、ハイドロプレーニング現象と言います。これに対し、トレッド溝(たて溝+よこ溝)のあるタイヤでは、60km/h くらいまでは、10km/h と同等なコーナリングフォースが得られ、コーナリングフォースがゼロになるのは約100km/h になってからです。このように、トレッド溝にはハイドロプレーニング現象を防ぐ大切な役割があるのです。

図1 タイヤ力学特性試験装

図1 タイヤ力学特性試験装置

図2:トレッド溝の効果

図2 トレッド溝の効果

ハイドロプレーニング現象の発生要因

  1. 水の影響
    路面にたまった水膜が非常に薄ければ、速度を増しても接地面内の排水作用によりハイドロプレーニングは発生しにくくなりますが、排水の量には限界があるので、水膜が厚いほどハイドロプレーニングが発生しやすくなります。
  2. 路面の影響 一般の舗装路は横断勾配が付けられており、水は路肩方向に流れますが、わだちがある場合や大雨の場合には水たまりができ、それらによりハイドロプレーニングが発生しやすくなります。
    この問題を解決するために近年普及しつつあるのが、排水性舗装です。この舗装では、雨水は舗装の隙間を通って排水溝へ流れてしまうので、水たまりができません。
  3. タイヤの溝、空気圧の影響
    タイヤのトレッド部には、周方向・横方向の溝やサイピングが設けられており、排水性を向上させています。タイヤが摩耗すると、トレッドの残溝が少なくなり、排水効果も少なくなるため、ハイドロプレーニングが発生しやすくなります。 また、タイヤの空気圧が低い場合、タイヤを路面に押しつける圧力が低くなるので、ハイドロプレーニングが発生しやすくなります。空気圧をこまめにチェックし、車種ごとに指定された空気圧を保つことが大切です。

静かで安全なトレッド溝のタイヤを目指して

改良タイヤ

改良タイヤ

タイヤメーカーでは、静かで安全なタイヤの開発に向けて努力が続けられています。私たちも、トレッド溝の形状を改良することにより、できるだけ少ないトレッド溝でハイドロプレーニング現象を防ぐ技術を検討してきました。ハイドロプレーニング現象を防ぐためには、タイヤと路面の間に入り込む水をうまく排水することが必要です。ハイドロプレーニング現象は、タイヤと路面の間に水が入り込み、タイヤの摩擦力が発生できなくなる現象だからです。
私たちの研究の例を図1~図4に示します。図1のようにガラスでできた路面に水を張り、乗用車で走行します。水の中には、図2の可視化粒子(直径1~4.5 mmの粟の粒)を混ぜておき、その動きを高速ビデオカメラで撮影します。撮影された可視化粒子の動き(図3の帯状の白い点)は、水の流れに沿っているので、これを解析することにより、タイヤと路面の間に入り込む水の流れが明らかになります。結果の例を図4に示します。図の中の小さな矢印が、その場所での流れの方向を示してします。タイヤと路面の間の水は矢印に沿って排水されているのです。この方向に合わせてトレッド溝を配置すると、水は溝にそって排水されるため、少ない溝で効率よく排水することができます。これにより、溝が少なく、ハイドロプレーニング現象の起こりにくいタイヤ、つまり静かで安全なタイヤの開発が可能となるのです。

図1:実験方法

図1:実験方法

図2:可視化粒子

図2:可視化粒子

図3:可視化の結果

図3:可視化の結果

水の流れの分布

図4:水の流れの分布