1970年代以前の4WD(4輪駆動車)といえば、ジープ等で代表される悪路、雪路等の特殊な路面状況下での走破性向上を主目的としたものがほとんどで、一般的にもそういうイメージで捉えられてきたと思います。1980年代に入ると、一般路上での使用を目的として走行性能と操安性を向上させたフルタイム4WDが出現し、乗用車を中心にさまざまな4WDシステムが急速に普及してきています。

2WDと4WDの違いを知るには、まずタイヤの特性を理解しておく必要があります。駆動力とコーナリングフォースはスリップ比に対して一般的に図の様な特性を示します。すなわち、一定速度で走行しているとき(スリップ比がほぼ0)にはコーナリングフォースが最も大きく、アクセルを踏んで駆動力が増すとそれに反してコーナリングフォースは徐々に低下します。強い駆動力をかけ、車輪が完全にホイールスピンしている状況(スリップ比1.0)ではコーナリングフォースはほぼゼロとなります。
| 駆動力とは? | 車を発進、加速するための力のことです。エンジンが発生した力をタイヤが路面に伝えます。 |
|---|---|
| 施設名 | 車の向きを変えたり、カーブを走行したときに車にかかる遠心力にうち勝つために、タイヤが発生するタイヤの横向きの力のことを言います。 |
| 総合試験路 | 雪道などの滑りやすい路面で発進しようとしたときに、タイヤが空転して発進できない事がありますが、このようにタイヤがその場で空転している状態を言います。 |
今日の乗用車の駆動形式は2WD(2輪駆動)と4WD(4輪駆動)に大別できますが、さらに前者は前輪駆動(FWD)と後輪駆動(RWD)に分けることができます。滑り易い路面で急速な発進加速をしようとしてアクセルを踏みすぎると、ホイールスピン(空転)を生じてしまうことがあります。このときFWDの場合には前輪のホイールスピンによりハンドルは効かなくなります。
一方、RWDの場合には後輪のホイールスピンにより後輪のコーナリングフォースがなくなり、尻振りを生じたりして車両の安定性がそこなわれることがあります。このような状況においても、4WDの場合には2WDと違い駆動力が前後輪の両方に配分されるため、ホイールスピンは生じにくくなり、発進性能が向上すると共にハンドルの効きと車両の安定性が保たれることになります。 車輪に駆動力が加えられると一般にコーナリングフォースが低下するため、前輪に駆動力がかかるFWDでは前輪のコーナリングフォースがやや小さく、後輪のコーナリングフォースは十分な余裕がある状態となります。そのため、ハンドルの効きは低下するが(いわゆるアンダーステア傾向)安定した走行状態が保たれます。
一方、RWDでは前輪のコーナリングフォースに余裕がありハンドルの効きは十分ですが、後輪のコーナリングフォースがやや小さくFWDに比べて安定性が低下する傾向にあります。
4WDでは駆動システムの違いにより多少は異なるもののFWDとRWDの中間の特性を示し、十分な安定性と駆動性能を得ることができます。
駆動方式による濡れた路面上等での限界付近の走行状態についてみることにしましょう。 FWDの場合には図2のように後輪のコーナリングフォースには余裕がありますが、前輪の大きな駆動力の要求に伴ってコーナリングフォースが低下し、前輪が旋回円の外側に膨らむため進路を維持できなくなってしまいます(アクセルを戻せば元の旋回円の方向に戻ります)。 RWDの場合には図3のように前輪のコーナリングフォースに余裕がありますが、後輪の大きな駆動力の要求に伴ってコーナリングフォースが低下し、後輪が旋回円の外側に流れ出してしまい車体がスピン傾向となってしまいます。
このような場合でも、4WDでは図4のように前後輪に必要となる駆動力が配分されるため、前輪又は後輪のコーナリングフォースが低下して旋回進路を維持できなくなる限界が高くなり、安定性が向上することになります。
しかしながら、前後輪のコーナリングフォースが限界となるような状況では4WDと言えども旋回走行が不可能になります。そのときの挙動は4WDの形式や車両特性により異なりますが、いずれにしてもFWDとRWDの中間的な挙動を示すと言われています。
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