インタビュー第4回 自動車を夢見るすべての子供たちへの、最高の贈り物にしたい。
1 時代の変化と温故知新の融合~こうして燃料電池バイクは誕生した
2 ペダルを漕がず走る姿に驚嘆の声~年を追って進化する燃料電池バイク
3 経験は知識となり、次の目標を生み出す~論より証拠を見せつけろ

ペダルを漕がず走る姿に驚嘆の声~年を追って進化する燃料電池バイク

授業では、どのようにして燃料電池バイクを開発されたのでしょうか。
佐藤先生と自動車科の生徒さんたち。つなぎ姿が自動車科っぽい。

佐藤先生と自動車科の生徒さんたち。つなぎ姿が自動車科っぽい。

燃料電池を入れるカゴも、もちろん自分たちで調達してきたんだとか。これは第二号車のもの。

燃料電池を入れるカゴも、もちろん自分たちで調達してきたんだとか。これは第二号車のもの。

都立墨田工業高校は1900年に創立された伝統校です。自動車科が設置されたのは4年前になります。 ここでは自動車整備だけでなく、設計もできるような人材育成を目標にしています。その自動車科の生徒たちと燃料電池バイクの設計製作に取り組みました。 3年生で行う「課題研究」という授業のテーマとして、ですね。

まずはもちろん「モノの道理を理解すること」からスタート。

平成15年度から始まった最初の授業は、まず模型教材の製作から取り組みました。 カーボンブラックの焼成から白金を用いた触媒の加工、直接水素型燃料電池を作るための一連の製作工程を通して基礎知識を養い、まずは燃料電池を知ることをテーマにしました。

燃料電池バイクに取り掛かれる授業は、週のうち2時間、年間で30~40時間ほど。 4月にスタートして、12月には終了するというタイトなスケジュール。3年生は就職活動などもありますし、決められた時間の中で完成させることに神経を使いました。

予算もかなり厳しい状況だったので、外国メーカーの燃料電池を使いました。 本当は全ての部品を国産を使いたかったですし、欲を言えば、自分たちでスタックから作ってみたかったというのが正直なところ。 それでも、限られた条件の中で、自分たちのできる最大限のものを追求することはできたんじゃないかなと思います。

燃料電池を用いた個別認証車両第一号

これが完成した第二号車。一見するとバイクというよりも電動アシスト自転車のよう。

これが完成した第二号車。一見するとバイクというよりも電動アシスト自転車のよう。

実際に動かすと、やはりバイク。想像以上のスピード感があり、ペダルを漕がなくてもぐんぐん進む。

実際に動かすと、やはりバイク。想像以上のスピード感があり、ペダルを漕がなくてもぐんぐん進む。

ナンバープレート交付証明書。

ナンバープレート交付証明書。

平成16年度には、第一号車のベースフレームを製作し、校内の中庭で初走行も果たしました。 一般の生徒達は「なんだ、自転車を走らせてるのか」と思っていたらしいですが、ペダルを漕がずに走っていることに気が付くと、みんな驚いてましたね。 本当に燃料電池バイクなのかと、半信半疑で近寄ってくる生徒もいました。

私も製作に携わった生徒たちも満足でした。専門家の人たちには高い評価をいただきましたから。ところが、低い評価をする人たちもいるんですよ。 いくら歩くより速いといっても、当時の最高速度は15km/hでしたから、普通の自転車と変わりませんしね。でも自転車のフレームを考えれば決して遅くはないスピードですよ。 160wというスタックはガソリンエンジンでいうと20cc程度のものですから、シャーシー性能とのバランスを考えれば、本当はこれで十分なんですけど…。 社会はガソリンエンジンの高出力に慣れ親しんでしまっているようですね。

公道を走行するためにナンバープレートも取得しました。個人的なことをお話すると、私自身趣味として自動車の新規登録検査や構造変更検査を幾度も経験し、何台ものクルマを作ってきました。 簡単に言うと、チューニングカーの公認改造ですね(笑)。これを検査官に認めてもらうには、当然、法律という修羅場もありました。

その経験があったので、この燃料電池バイクのナンバー取得は早くから視野に入れていました。法の解釈と事前準備もしていたので、大きな問題もなく登録できました。 経済産業省のお話では、国内で60台目の燃料電池車であり、燃料電池を用いた個別認証車両として国内第一号になったそうです。

それと、記憶に残ることとして、保険代理店で話題になったのは、「主たる燃料が水素」で自賠責を事務処理できるかという点でした。 「ナンバープレートが交付された以上、所有者は自賠責に加入する義務があるのでは?」と主張して自賠責保険に加入しました。

これは、もしかすると水素において様々な法律や規制が整備される前にナンバープレートの交付を受け、公道を走れるクルマを作ってしまったようですね(笑)。

前年作を踏まえて、さらにバージョンアップした第二号車。

平成17年度は、前年作をさらにバージョンアップした第二号車を製作しました。 予算がないのでキャパシタの変わりにバッテリを載せ、さらに栗本鐵工製のMH(メタルハイドライド)タンクを搭載。 水素タンクは2つで、水素を注入すると1000NL。160wのスタックで最高速度も25km/hに向上させて、航続距離も概ね400kmにまで伸ばしました。

次のビジョンは、原付最大枠。

今後は、原付最大枠の0.6kw(50cc以下)までのものにトライしたいと考えています。 現在のスペックの4倍近くになりますね。金額もそれ相応にかかるとは思いますが、乗り物を作るからには速いものを作りたいじゃないですか。 予算とのからみで、どこまで納得できるものが作れるか分かりませんが、とにかく、今以上のものを生徒たちと一緒に作り上げたいですね。

そして生徒たちには、この授業での経験をもとに、新しい発想やひらめきで、次世代を担っていって欲しいと思います。

3 経験は知識となり、次の目標を生み出す~論より証拠を見せつけろ