移動体用高精度位置標定システムに関する調査研究報告書(本編)

ネットワーク社会は、生活や産業活動を情報豊かなものにするとともに、今後もさらにその多様さと情報量を増やしていくことになるだろう。自動車もこうした流れを避けて通るわけにはいかない。この流れの一つが自動車における位置標定の高精度化である。

もちろん、準天頂衛星と電子基準点の二つのインフラがこの導火線になったことは間違いない。準天頂衛星は、日本で打上げるGPS衛星のうちの1機が必ず仰角70゜〜90゜の天頂近くに来るような軌道にのせ、アメリカのGPSを補間する形で高精度化に貢献しようと考えている国産衛星の一つである。2008年から打上げ予定であり、将来的に期待できるインフラである。

既に高精度位置標定に応用、利用されているのが電子基準点である。電子基準点は地殻変動監視のため、国土地理院が1993年度に南関東・東海地域に110点設置して以来、2002年度中に1200箇所の設置が完了した。さらに2002年5月から200箇所の電子基準点のリアルタイムデータ提供が開始され、今年度中に1200箇所全ての電子基準点のリアルタイムデータ提供も開始される。こうしたインフラの進歩は、ネットワーク社会の発展とインテグレートして、測量(固定点の位置標定)の世界に革命的発展をもたらし、数cmの精度で測量ができるようになった。

本年度から始まった本調査研究では、移動体用高精度位置標定システムへのリクワイアメント作成を目標にGPSによる測位データ及びインターネット・電子基準点を利用した補正情報で補正した測位データから移動体(自動車)の位置精度の実力値を明確にし、その高精度化の課題を明らかにするものである。

GPSによる高精度位置標定技術は多くの分野で利用される可能性がある。中でも移動体(自動車)への利用は、その中核を成すものであり、運転支援システム等多くのITSサービスへの利用が想定されている。

移動体における位置精度が現在の10〜20メートルから数10センチメートルまで改善されると、現在のナビゲーションシステムで必須のマップマッチングが不要になり、GPSで得られる位置データをそのまま使う新しい発想のITSサービスを実現する契機になる。また、位置データの高精度化は自動車走行の縦制御(前後方向)と横制御(左右方向)を可能とし、運転支援システムを実用化開発ステージに押し上げ、安全で快適な交通社会の実現にも寄与できる。

現在のD-GPS補正方式では、基準局における位置補正情報をFM多重放送等で広域の車両に送信し、各車両が同一の位置補正を行っている。この位置補正情報では時間的に変動し、かつ、基準局と車両との距離が大きくなるほど誤差が増加するため、移動体にとっては高精度な位置標定を必要とするITSサービスを実現できないと考えられる。

移動体用位置標定の高精度化は、当該地点、当該時刻での車両固有の補正情報を最寄3ヶ所の電子基準点の補正情報から算出し、個々の車両へ通信する補正方式へ移行させることで実現される。この新たな位置補正情報システムにおける位置精度の検証により位置標定高精度化技術開発の方向性を明らかにし、位置標定技術応用商品の開発促進に資することを本調査研究の目的とする。

(1) 移動体における位置精度の目標値検討

(1) 高精度な位置情報を必要とする移動体のITSサービスを実現するために、必要となる位置精度、カバレッジ等の検討を行う。
(2) 検証すべき、位置精度の目標値設定を行う。

(2) 位置精度の評価および課題抽出

(1) 目標の位置精度、カバレッジ等を評価できる手法、方法を検討し、位置精度基礎評価システムを設計/試作/構築する。
(2) GPS方式による測位について、移動体での位置精度を評価し、現状の位置精度レベルを把握する。
・GPS単独測位、補正を加えたGPS測位のそれぞれに対して測定し、現状の位置精度におけるレベルを把握する。
・補正情報については、地上における最寄の基準局を基準点とする補正方式(D-GPS:Differential-GPS)、車両個別位置を仮想基準点として最寄の電子基準点から計算する補正方式(VRS:Virtual Reference Station)の2種類について評価する。
・GPSのカバレッジに関して評価法を検討する。
(3) (2) で測定した結果をもとに、様々な環境下における位置精度を想定し、移動体用高精度位置標定システムとしての課題抽出等を行い、位置標定技術開発のための技術的リクワイアメントを作成する。

1.調査研究の目的

2.実施体制

3.調査研究の内容
 第1章 調査の方法
  1.1 測位システムの方式
  1.2 測位システムの比較
  1.3 使用した測位システム
  1.4 データ取得と処理

 第2章 位置精度の目標値の設定
  2.1 有望な新規サービスの想定
  2.2 各想定サービスのリクワイアメント
  2.3 位置精度の目標値

 第3章 実験内容と評価
  3.1 開放地での実験
  3.2 一般道路での実験
  3.3 実験結果の地図上への表示

 第4章 考察とまとめ
  4.1 位置精度測定結果
  4.2 捕捉衛星数とDOP
  4.3 捕捉衛星数と測位品質
  4.4 FIX状態での誤差
  4.5 位置精度劣化の主要原因1(捕捉衛星数の減少)
  4.6 位置精度劣化の主要原因2(マルチパスの影響)
  4.7 今後の課題

4.調査研究の今後の課題及び展開

5.海外調査報告

参考資料−1
参考資料−2
参考資料−3