ITSによるEV利用の省エネルギー、低公害交通システムに関する調査研究報告書

電気自動車(EV)が公害防止の切り札、環境保全の希望の星と期待されて久しい。しかし、EVの普及は遅遅として進まない。普及の障害は性能、価格の面で、ガソリン自動車に劣るためであり、その原因は動力源である電池の性能が不充分なためであるとされている

EVの普及の歴史を振り返ってみると、ガソリン車との性能や価格の差がその普及の決め手ではないように思われる。EVが活躍した時代は戦前にもあったが、戦後では、終戦直後のガソリン不足の時代に木炭車の後継車?として、戦時中に潜水艦用として発展した蓄電池を利用して開発されたEVが、戦災復興に活躍した。昭和24年の統計によれば、EVの保有台数は3,299台で、全自動車保有台数の3%を占めている。しかし、石油の輸入規制の緩和と共にEVは市場から消えた

その次に脚光を浴びたのは、昭和45年の大阪万国博で、会場内とはいえ、300台ものEVが利用されて世間の注目を浴びた。これが刺激となって昭和46年に、EVが通産省の大型プロジェクトの開発対象に取り上げられ、EVに対する関心は著しく高まった。その推進力となったのは、米国ロスアンゼルスのスモッグ、東京の環七喘息、同じく四谷柳町の排気鉛公害など、自動車の排気ガス対策を求める世論であった。しかし、大型プロジェクトによる7年間の努力も空しく、ガソリン自動車の目覚しい性能の向上により地域的公害は沈静化し、EVに対する熱気も消沈した

この間、ゴルフ場の電動カートは、直実に普及を伸ばしている。鳥のさえずりがふさわしい場所にエンジンの爆音がそぐわないためではあるが、起伏の多いゴルフ場では電池の重量がカートの重心を下げ、走行安定性が向上すること、EVは保全・整備に手間がかからないこと、および充電時間が障害とならないことなどが、お客様にも経営側にも評価されているためである。同様に、EVは倉庫や工場内でも活躍している。電動フォークリフトは、排気ガスがなく、電池の重量がバランスウエイトの働きもするし、限られた空間でのEVの操作性が評価されているためである

これらの例は、EVの特性がその利用目的に適合し、市場で評価と信頼を獲得したためであり、ガソリン車と競合しない分野では普及が可能であることを如実に示している。EVの普及が進まない理由は、ガソリン車に対する性能の不足ではなく、EVがその特性を発揮できる利用システムの開発が不足しているためであると言うことができる

世間の価値観は、経済性と社会性のバランスの上に成立っている。自動車は、従来、経済性を限りなく追求して来た製品であり、現在の自動車は経済合理性の極致に達していると言っても過言ではない。しかし、最近では、経済性を抑制してでも社会性を追求する風潮が急速に高まって来ている。社会性の高いEVに追い風が吹いてきたのである。しかも、排気ガスによる地域的公害を容易に克服したガソリン自動車は、今度はCO2ガスによる地球温暖化への対策と言う難問題に直面し、苦戦を強いられている。EVの早期実用化により、少しでも自動車産業の負担の軽減に協力するのがEV関係者の責務であろう

他方、情報通信技術の目覚しい進歩とともに、ITS(高度道路交通システム)は道路交通に新風を吹き込む夢の技術であるとして、国家的プロジェクトとして政策的に推進されている。ITS技術によって、EVの欠点を補い、特性を最大限に発揮させる利用システムが開発できるならば、希望の星と夢の技術の提携となり、EVに新しい展開が期待できる。ITS/EV新交通システム研究委員会は、このような考え方に基づいて設立された

現代社会は自動車の利用を前提にして成立っており、個人の生活も自動車を抜きにしては考えられない。交通システムも社会システムも100年の歴史を持つガソリン自動車を前提にして成立っている。ガソリン車とは異質な特性を持つEVが、たとえITS技術の支援があるとしても、市場で簡単に評価され、認知されるとは思われないが、EVにとっては飛躍のための好機であり、ITS技術にとっては道路交通分野に情報化時代への道を切り開く腕の見せ場である。このような夢と希望を持って発車したITS/EV新交通システム研究委員会の初年度の研究開発活動報告書をお届けします。ご批判、ご助言をお願いします

道路交通における「環境の保全」を考えるには、低公害車と位置づけられている電気自動車(EV : Electric Vehicle)の利用が最適である。しかし、EVは無排気性、静粛性等の低公害性は高く評価されるが、走行距離、高速性能、エネルギー補給、価格で内燃機関自動車(以下「ガソリン自動車」で代表させる)に遜色があるため、充分な普及を見るに至っていない

他方、ITSは自動車交通の情報化、知能化の技術としてその可能性が大きく期待されているが、カーナビゲーション、新交通管理システム(UTMS : Universal Traffic Management Systems)、自動料金収受システム(ETC : Electronic Toll Collection)などの個別分野に成果が見られるものの、システム的な成果は未だ見るべきものが見当たらない。しかし、ITS技術によるEVの利用方法の開発によって、環境にやさしい交通システムが構築できれば、EVの普及促進のみならず、ITSの実用化にとっても大きな成果が期待できる。このため本調査研究では、近く商業生産が見込まれる超小型EVを対象とし、最先端のITS技術による交通システムの開発と共に、実証実験によるシステムの実用性、事業性の確認を行う

第1章 世界のEV及びITSの利用状況
第2章 EV利用新交通システムの観念ならびにEV及びITSの技術特性
第3章 EVレンタカー・システムの基本的構成及び実証実験の実施方針
第4章 EVセカンドカー・システムの基本的構成及び実証実験の実施方針
第5章 公共交通利用システムの基本的構成
第6章 実証実験に向けて