DSRC/ITS車載器の応用技術研究開発
第III章 ITS車載器の機能多様化技術開発

1.はじめに
2.機能多様化に関する検討
3.DSRC車載器とITS車載器とのインターフェース仕様の検討
4.DSRC車載器とITS車載器との連携による新機能の研究開発及び実証実験
5.規格化・標準化領域の検討
6.研究発表・講演、文献、特許等の状況

(1) ITS車載器とDSRC車載器連携による多機能化の検討
・15種類のDSRC車載器とITS車載器の連携アプリケーションを検討し、ITSサービスとの関係を分析した。
・DSRC車載器‐ITS車載器の連携機能モデルを作成し、アプリケーションと機能コンポーネントの関係を分析した。
・アプリケーションが要求するDSRC通信への要件を抽出した。
・アプリケーションが要求するITS-DSRC車載器間インタフェース要件を検討した。

(2) 研究開発及び実証実験の成果
<1> DSRC車載器とナビゲーション装置の連携に関する研究開発
a.開発の目的
・DSRC車載器とナビゲーション装置を連動させるインタフェースの研究開発、及び連動によるETCのHMI高機能化の研究開発を行う。
・HMI高機能化により、解りやすく且つ安全に案内することでETCの利便性の向上を狙う。
b.実験システムの特長、課題
・予告ゲートにおいてETCレーンへの誘導を素早く通知する必要がある。本研究ではナビやDSRC車載器のCPUや周辺ハード性能(コスト)アップしないことを前提とし、低速な通信速度のインタフェースを用いた場合でも、HMI高機能化が実現できるか、試みる。
・入口ゲート、出口ゲート、ICカード読み取り通知機能についても開発を行い実現可能であるか確認する。
c.確認事項
・擬似ETCアプリケーションにおいて、ナビ連動型ETC車載器を開発し、DSRC無線通信開始からHMI通知開始までの動作タイミングの測定を行う。
・開発した機器をテストコースに持ち込み、走行状態にてETCレーン誘導機能(予告ゲート)の官能評価を行い、HMI高機能化の有効性を確認する。
・入口ゲート、出口ゲート、ICカード読み取り通知機能についても動作確認を行う。
d.考察
・DSRC車載器とナビゲーションを連携することにより、ETCアプリにおいてのHMI高機能化が可能であることが確認できた。
・低速なIEBus通信速度18kbpsを使用しても、DSRC (ETC) 通信を開始してから、ナビゲーションがETCレーン誘導案内を開始するまで、293mSEC完了することを確認できた。時速60km走行において、わずか4.9mで案内を開始することになり、低速な通信速度でも十分に間に合うことが確認できた。
・実際に約20名の人が運転し、ETCレーン誘導機能を体験してもらった結果、HMIの高機能化の有効性を確認できた。
・入口ゲート、出口ゲート、ICカード読み取り通知についても動作確認できた。
・以上の機能により、安心してETCが利用でき、ETCレーン誘導機能においては、料金所付近の渋滞緩和や事故防止にもつながり、ETC車載器の普及が期待できる。

<2> DSRC車載器と車載用コンピュータの連携に関する研究開発
a.開発の目的
・実際のDSRC無線通信を介し、カーショップ等にて停車中にナビ、ゲームデータ等の比較的大容量データを車載コンピュータにダウンロードするケースを想定した実証実験を行う。
・DSRC車載器と車載コンピュータの通信インタフェースとして車載USBを用い、動作、性能、課題等を確認する。
b.実験システムの特長、課題
・路側サーバーのコンテンツとして、ニュース(テキスト)、コンピュータ用実行可能アプリソフト、WAVEデータ、HTMLファイルを用意。
・車載コンピュータは、メニューでコンテンツを選択、ダウンロードし、表示、実行等、処理する。また、路車のアプリ間の通信プロトコルはTCP/IPでは無く、独自方式を採用。
c.確認事項
・車載コンピュータと路側サーバーとのDSRC無線リンク確立を確認し、サーバー、コンテンツメニューをダウンロードし、ニュースのダウンロードと自動表示、TTS(テキストツースピーチ)自動読上げ、アプリケーションソフトのダウンロードと実行、MP3、Waveデータのダウンロードと再生、HTML文書のダウンロードと表示ができることを確認した。
d.考察
・DSRC車載器と車載コンピュータを連携させることによって、ETC以外の新機能(サービス)が可能なことが確認された。
・実証実験システムのDSRC通信速度(市販ETC車載器同等のDSRC車載器を用いたため、理論最大速度は111kbps)は、RS232C (38.4kbps) 時の最大データ速度は6.4kbps、車載USB (12Mbps) の最大データ速度は19.4kbps。同条件(同じアプリ、同じ転送プロトコル)で比較した結果、車載USBの方がRS232Cより3倍早いことが確認された。ここで、理論値との差は、独自通信プロトコルによるオーバーヘッドが原因と思われる。
・DSRC車載器‐ITS車載器間インタフェースとして、I/F標準化に必要な要件(オープン規格、大容量、耐車両ノイズ性、対振動性、電源供給可能、ホットアタッチデアタッチ可能等)を備える車載USBを1例とし提示した。

<3> DSRC車載器と携帯情報機器の連携に関する研究開発
a.開発の目的
・車内に持ち込まれた携帯情報機器と路側のサーバーを、DSRCを経由しつつも、エンドポイントではIP(インタネットプロトコル)によって接続するような実験システムを開発し、実証実験で新機能(携帯情報機器と路側のサーバーとのIP接続)の有効性を確認する。
・上記のIP接続を前提とした場合の、車載器インタフェースについての指針を得る。
b.実験システムの特長、課題
・車載器インタフェースとしてLANのデファクトスタンダードである10Base-Tを選択(=IPスルー方式)。車内へ持ち込まれたモバイルPCからは、LAN上で使用するソフトウェア、ハードウェアを全く変更すること無く路側サーバへアクセス可能。
・比較検討のため、RS232Cも採用(=FTPProxy方式)。
c.確認事項
・IPスルー方式について、路側LANおよびインタネット上のNTサーバなどIP標準サーバへのInternetExplorer、FTPなどのIP標準クライアントでのアクセスを確認。
・IPスルー方式について、uplink/downlink共に実効伝送速度約180kbpsを確認。また、FTP Proxyについて、downlinkで約87kbpsを確認。(いずれもup/down合わせてデータスロット数が4つの全二重伝送フレームを使用しそのうち1スロットだけをIP通信に割当)
d.考察
・IP接続が既存システムとの高い互換性をもつ事が実証できた。これは、DSRCを用いたシステムのトータルコスト削減と早期立ち上げに寄与すると考える。また、伝送速度についても、理論最大速度213Kbpsに対してIPスルー方式で約180Kbpsという値が実測できた。これは、DSRCが通信コストを下げられる可能性を考慮すれば、他の通信メディアと対抗できる値と考える。
・10Base-Tを車載インタフェースとして採用することで、高い互換性と他の通信メディアと対抗できる伝送速度を実現できることを実証した。但し、近年モバイルPCなどに標準装備されつつあるUSBなどの高速なバスでも、上位プロトコルとしてIPが実装されれば、今回の実験で実証されたメリットは享受できると考える。

<4> DSRC車載器と運行管理装置の連携に関する研究開発
a.開発の目的
・運行管理用車載装置とDSRC車載器を接続し、運行管理用車載装置で収集した各種データを、DSRC車載器とDSRC路側機(運行管理用基地局に接続)を通して、運行管理用基地局に送信することを想定した実証実験を行う。
・他の通信媒体(携帯電話)との比較も行い、動作、性能、課題等を確認する。
b.実験システムの特長、課題
・運行管理用車載装置に擬似的に蓄積した位置情報等のデータを、運行管理用基地局装置にアップロード。
・運行管理用基地局装置に擬似的に設定された運行管理データを車載装置にダウンロード。
・既存通信方式との比較。
c.確認事項
・DSRC車載器と運行管理用車載装置の基本接続確認および連動動作を確認。
・運行管理用基地局装置と評価用DSRC路側機の基本接続確認及び連動動作を確認
・上記2つの機器を利用し、擬似的な車両運行管理システムを想定し、基地局―車両間でのデータ通信が正常に行われることを確認。
d.考察
・DSRC車載器と運行管理用車載装置を連動させることにより、ETC以外の新機能(サービス)が可能なことが確認された。
・走行中の運行管理データを基地局に帰った時点で、基地局管理装置に高速に送信できることが確認でき、今後の車両運行管理への応用が期待できる。
・今回の携帯電話との比較において、DSRC車載器を利用した場合にリアルタイムでの利用は不可能なものの、データ通信を回数で換算した場合には、15倍の処理能力が確認できた。

(3)ITS車載器とDSRC車載器間のインタフェース仕様案
 車載USBを用いたインタフェース仕様書をまとめ、今後のIDB (ITS Data Bus) インタフェース標準化検討に供した。車載USBは仕様が公開されており、車載環境に適応しているため、標準化の1候補になり得ると判断する。この成果を第III章の付属資料1として別途添付した。