DSRC/ITS車載器の応用技術研究開発
 第II章 DSRC応用プラットフォームの研究開発

●1.はじめに

●2.用語集

●3.DSRC応用プラットフォームの研究開発総括編
本章は、DSRC及びDSRCを用いたアプリケーションの現状と、DSRCプラットフォームの目的及び必要性について述べる。
 1.概要
 2.DSRCプラットフォーム 〜サブプラットフォームの構成理由
 3.DSRCプラットフォームとアプリケーション
 4.インターネット利用DSRCプラットフォーム
 5.インターネット非利用DSRCプラットフォーム
 6.セキュリティ
 7.研究成果

●4.「大容量対応サブプラットフォームの研究開発」 日本電気株式会社
ITS (Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)の1つとして、ETC (Electric Toll Collection:ノンストップ料金収受システム)の本運用が目前に迫っている。ETCシステムは、DSRC (Dedicated Short-Range Communication:狭域通信)を用いて、路側に設置される路側機と車両に搭載される車載器との間で通信を行うことで、車両が停止することなく有料道路の課金を行うというシステムである

現在、DSRCを用いてETCの他の様々なITS関連アプリケーションの早期実用化が求められている。しかしながら、DSRCで規格化されているのは、通信プロトコル部分のみであり、実際にシステムを構築する際には、アプリケーション単位で通信プロトコルとアプリケーションの間のインタフェースを規格化する必要がある。 そこで、この問題を解決するために、アプリケーションによらない共通のDSRC―アプリケーション間のインタフェースを規格化するためのDSRC応用プラットフォームの研究・開発を行い、さらにその中で大容量データ転送を行うためのDSRCサブプラットフォームを構築する

大容量対応サブプラットフォームの構築に際して、次の3点に重点を置いた。 第一点は、アプリケーションとのインタフェースを汎用的なものにすることである。車内のノートパソコン等を車載器に接続することで、DSRCを用いてインターネット接続できるようにするために、また新規アプリケーションサービスを容易に構築できるように、アプリケーションインタフェースとしてIPを用いることである。 次は、インターネット接続で必要となる大容量データ転送を取り扱うことのできるように、DSRCプロトコルを一部拡張することである。 最後に、普及のしやすさを考えて、DSRC車載器側のリソースはETC用と同程度のものを想定してシステム設計を行うことである

これらを考慮して大容量対応サブプラットフォームのシステム仕様設計を行い、仕様に基づいてシステムを試作した。試作システムを用いて実証実験を行い、本研究で構築したサブプラットフォームが、先に挙げた3つの点を満たし、大容量のデータ転送を実現することができた。得られた結果より、我々が研究開発を行った大容量対応サブプラットフォームが、DSRCプラットフォームの一部として、十分な機能を持つことを実証することができた

 1.はじめに
 2.DSRC大容量対応サブプラットフォームの研究開発及び実証実験
 3.研究発表、講演、文献、特許等の状況

●5.「高速処理対応サブプラットフォームの研究開発」 株式会社 東芝
ITS (Intelligent Transport Systems) 通信の大きな柱としてDSRC (Dedicated Short-Range Communication) があり、ITS関連技術の早期実用化のためには、DSRCを利用して、多くのアプリケーションを提供できる環境が求められている。しかし、DSRCは、アプリケーション単位で、通信プロトコル(DSRC)とアプリケーション間のインターフェースを取り決め規格化する必要がある。しかしながらアプリケーション単位で規格化を行うのは、非常に不効率である。このため、アプリケーションに対して共通のインタフェースを持ったプラットフォームを構築することが望ましい。本研究は共通のインタフェースを持ったDSRC応用プラットフォームを提案し、その論理構造のあり方について研究を行ったものである

高速処理対応サブプラットフォームは、DSRCサブプラットフォームの1つである。このプラットフォームは、DSRCの高速性を保ちつつ、DSRCとアプリケーション間に位置し、DSRCの機能をアプリケーションに、より簡単に提供することにある。本実証実験では、高速通信性能、簡易利用性としてインターネット対応などを検証した。 結果として、簡易利用性の検証とインターネット対応の検証から、DSRC及び高速処理対応サブプラットフォームを使用することで、インターネット用のソフトウェアを、そのままDSRCシステムで使用できることが判った。このことは、DSRCが一般アプリケーションから隠蔽されていることを示し、簡易利用できることを示す

データ伝送能力試験では、高速処理対応サブプラットフォームの伝送試験を行った。結果として最高290kbpsで通信できることが判った。しかし、この伝送速度は伝送するデータ量により、変わることも判った。これは、DSRCがフレームによって管理された通信プロトコルであることに大きく影響している。1つのフレームで送信できるデータ量は固定化されているため、1フレームで送りきれないデータは次のフレームへ繰り越される。このとき、繰り越されたデータ(1バイト)は、ダミーデータとともに送信されるため、伝送効率は著しく劣化する

結果として、DSRCを使用して、より高速に通信するためには可変フレームとすることが望ましい。今回のフレーム構成は、1つのフレームで送信できるデータが固定されているが、これを少ないデータの時は、小さいフレーム構成で、多いデータの時は大きなフレーム構成で送り、余ったデータを順次小さいフレーム構成で送信していく等の機能を入れることが望ましい。このようにデータ量によってそれに見合ったフレームを動的に選択することで、より効率の良い通信が可能となると考えられる

 1.はじめに
 2.DSRC応用プラットフォームの研究開発
 3.研究発表、講演、文献、特許等の状況

●6.「セキュリティ対応サブプラットフォームの研究開発」 株式会社 日立製作所
DSRC応用プラットフォームの構成要素の一つであるセキュリティサブプラットフォームについて、路側機に接続されるネットワーク側へのアクセス防止等を目的とするシステムアーキテクチャを構築し、この概念に基づいたセキュリティサブプラットフォームを実証評価する。この目的のため、以下に述べる項目の研究開発を実施し、目標を達成した

(1)セキュリティサブプラットフォームのアーキテクチャの研究開発
 アプリケーションユーザがセキュリティ方式を選択可能なアプリケーション系プラットフォームと、DSRCプロトコルスタック上の通信系プラットフォームからなるセキュリティサブプラットフォームアーキテクチャを構築した

(2)通信系プラットフォームにおけるセキュリティ機能の研究開発
 通信系プラットフォームに、DSRC通信環境を考慮した路側機側への車載器からのアクセス保護を目的とした、アクセス管理のための共通鍵による片側認証機能を実装・試験評価の結果、通常のネットワークアクセス管理とほぼ同等のセキュリティレベルを確保しつつ、認証による処理時間は次の通信フレームへの応答が可能なので、DSRC通信環境に十分適用可能な方式であることを実証した

(3)アプリケーション系プラットフォームにおけるセキュリティ機能の研究開発
 アプリケーションに相互認証、暗号機能を提供する、アプリケーション系プラットフォームを、TCP/IPレイヤとアプリケーション間に構築し、試験評価の結果、認証のみの処理時間は20ms程度と高速であり、DSRC通信環境に十分適用可能な方式であることを実証した

 1.はじめに
 2.セキュリティ対応サブプラットフォームの研究開発及び実証実験
 3.研究開発のまとめ

●7.「低リソース対応サブプラットフォームの研究開発」 沖電気工業株式会社 高度な情報通信技術を利用し、道路交通における種々の問題を解決するために、ITS (Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)の研究開発が進んでいる。日本においては、ITSの先陣をきって自動料金収受システム(ETC : Electronic Toll Collection System)が実用化した。ETCシステムは、今後増々の高度化・応用が期待されるDSRC (Dedicated Short Range Communication:狭域通信)プロトコルを利用している

本研究は、DSRCを利用したITSサービスを広く普及、促進するため、DSRCとアプリケーション(AP : Application)の中間に位置するDSRCプラットフォームの研究開発、なかでも低リソース車載器対応サブプラットフォームについての研究開発成果を報告する

DSRCプラットフォームは、DSRCレイヤ7のプリミティブより、マクロで簡易なアプリケーションインタフェース(API)を提供する。APにリンクされるライブラリ形式で提供され、開発が容易となる。 安価な車載器を開発・提供することは、ITSサービス普及の要件である。低リソース・低機能な車載器に対応するため、路側機の機能を強化し、車載器にプラットフォームを載せても大幅なコスト増加とならないような低リソース対応サブプラットフォームを提供する

低リソース車載器に対応するアーキテクチャとして、米国IEEEが提案しているDSRC Resource Manager (RM) がある。RMは、IEEE P1455 "Standard for Message Sets for Vehicle/Roadside Communications" をベースにしたもので、車載器には自律的なAPは実装しないで、車載器のリソース(Transponder Resource)の個々に対して、路側のリソースマネージャがアクセス管理を行うものである。リソースの種類は、Read-only Memory, Read/Write Memory, LEDs, Enunciatorなどがあり、Transponder Resource以外の外部リソースに対しては、Extended R/W Memoryを介してDigital Interfaceを提供する仕様となっている

本研究では、DSRCを利用したITSサービスに応用できる、DSRCプラットフォームを製作・評価し、今後のAP開発に有効であることを報告した。DSRCを使用したAPとしてETCシステムが実用化されたが、本研究の成果であるDSRCプラットフォーム/低リソースサブプラットフォームを使用して、様々なITSサービスの実現が期待できる 今後は、DSRCプラットフォームの拡張性を高め、標準化を促進し、ITSサービスのさらなる普及をめざすものである

 1.はじめに
 2.DSRC応用プラットフォームの研究開発
 3.研究発表、講演、文献、特許等の状況

●8.「低リソース対応サブプラットフォーム(対応アプリケーション)の研究開発」 三菱電機株式会社
本研究開発は、DSRC (Dedicated Short Range Communications) を用いた様々なITS (Intelligent Transport System) サービス(アプリケーション)の開発を容易にし、普及促進を図るため、アプリケーションによらない共通のDSRCとアプリケーション間のインタフェースを規格化するプラットフォームの基礎的な開発を行い、DSRCを利用する多彩なアプリケーションの追加・変更がDSRC上で容易に行うことができる環境を、アプリケーションに提供することを目的とする。具体的な構成として、上記共通プラットフォームは、DSRCに求められる特徴的な要求事項ごとに対応するサブプラットフォームの集合として構成する

「低リソースサブプラットフォーム」は、上記サブプラットフォームの一つであり、車載器が低リソース化されることによって、車載器が低コスト化されて、その普及促進が期待されるとともに、車載器内部の処理が簡略化されるために、アプリケーションの追加・変更がしやすいという効果が期待される

当社は主に、低リソースサブプラットフォーム上で動作する「低リソースサブプラットフォーム対応アプリケーション」を中心とするプログラム群を開発し、これを別途開発された低リソース対応サブプラットフォーム上で実際に動作させる実証実験を行った。 実証実験において、「低リソースサブプラットフォーム対応アプリケーション」が低リソースサブプラットフォーム上で所期の動作をすることが確認された。 実証実験の実施等を通じて得られた主な成果を、以下に示す

<1> サブプラットフォーム機能の実証とインタオペラビリティの確保
実証実験では、それぞれ独立に製作されたサブプラットフォーム/DSRCと対応アプリケーションを接続し、低リソースサブプラットフォームの提供するサービスを実際に使用して、アプリケーションが所期の動作をすることを確認した。アプリケーションとサブプラットフォームの接続性を確認する過程を通じて、インタオペラビリティ確保のための知見が得られた

<2> アプリケーション開発の容易性
従来のボトムアップ方式でなく、DSRCシミュレータを用いてアプリケーションを開発する環境をつくることにより、低リソースサブプラットフォームや、DSRCについて格段の知識を有さないでアプリケーションが開発できる環境を構築できることが確認できた

<3> 低リソースサブプラットフォームの有効性
今回、低リソースサブプラットフォーム上で実際に擬似アプリケーションを動作させ、また車載PCの拡張リソースプラットフォームソフトウエア等も開発することで、低リソースサブプラットフォーム構成及び設計の妥当性を確認できた。低リソースの車載器と、これを補完する汎用PCの組合せについても、その有効性が実感された

ITS (Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)の普及・発展を図る上で、路、車、人が連携するための情報通信の手段として、DSRC (Dedicated Short-Range Communications:狭域通信)が重要な役割を担う。 ITSの様々なアプリケーションの早期実用化のためには、DSRCを利用して、多くのアプリケーションを提供できる環境が求められている

DSRCは上記の目的に応えるための手段として規格化されているが、現状ではアプリケーション単位で、通信プロトコルとアプリケーション間のインタフェースを取り決め、規格化する必要がある。ITSの普及・発展のためには、アプリケーションによらない共通のアプリケーションインタフェースの登場が期待される

本研究開発では、DSRCを用いた様々なITSサービス(アプリケーション)の開発を容易にし、普及促進を図るため、アプリケーションによらない共通のDSRCとアプリケーション間のインタフェースを規格化するプラットフォームの基礎的な開発を行うことを目的とする。
 1.はじめに
 2.DSRC応用プラットフォームの研究開発
 3.研究発表・講演、文献、特許等の状況